バランスか非凡か?
「バカの壁 」という本がベストセラーになっていますね。メディアでもよく話題になっているのでご存じの方も多いでしょう。私がこのサイトで触れたようなことも一部書いてあったりして「そうだそうだ!」と楽しく読ませていただきました。
- 著者の養老さんは理科系の人らしく非常に興味深い考察を簡単なロジックでうまく説明しています(余談ですが、この本、タイトルの割に中身は真面目で特に理科系の基本的な知識が無いとかなり難しい本だと思われ、なぜベストセラーなのかちょっと??です。アマゾンなんかの評価が低いのはそのせいでは?)
- さてその中で脳についての非常に興味深い考察がありました。非凡な才能をある特定の領域(たとえばスポーツ・音楽)で発揮する人がいるのはどうしてか?また、そういう人の中には全体(全領域)の能力のバランスという意味では凡人に劣る傾向が強いのはなぜか?
- これはまさに私が思っていたことでした。特定の領域で非凡な才能を発揮する人は、たいていそれ以外の領域での能力が劣ることが多く、それがいわゆる「常識はずれの人が多い」という傾向になっている。そしてその非凡さはほとんどの場合、そのことへの興味の強さと能力が先天的に備わっていることが多い、ということ。
- 一方、そうした非凡な領域を持たない人も世の中にはたくさんいて、逆にそういう人は全領域である特定の能力を備えていることが多い。前者を「非凡型」、後者を「バランス型」と仮に呼びましょう。
- もちろん、両者は1本の線でクリアーに分けられるようなものではなく、その傾向は両端の間でなだらかに分布しているはずです。まぁ、それはおいておきましょう。
- ここでの問題はこの傾向によって自分が将来comfortableと感じる職種がある程度予測できるということです。非凡型の人が一般的なmanagementに向いているかというと答えはnoです。むしろその道の専門職を極める方が本人はcomfortableに感じるでしょう。ただどんな専門職でもキャリアを積んでくるとその部署でのmanagement roleを求められるようになります。それが会社です。そうするとそのmanagement roleが「できていない」ことすら自覚する能力も無いようなmanagementが生まれてくるわけです。
- 逆に専門職であった頃にはごく普通の人がmanagement roleにたずさわり始めて見事な力量を発揮し始めることもまれではありません。ただごく普通の人がそういう昇進の機会に恵まれることは多くはないでしょう。
- 私が過去に働いた数社で感じた問題点はむしろ前者でしょう。ある非凡な専門職での才能を発揮した人を、「全領域」にも非凡であるはずだと勝手に会社がassumeしてしまい、そんな能力を期待する、しかしそれは元々無理があるのは自明です。そんな仕事を期待され迷惑がっている「非凡」さんが結構多いのも事実のようです。
- これをどうしましょうという趣旨ではありません。ただ自分がどんな傾向を持った人間なのかを時折自己分析してみても損はないと思いました。